このコーナーでは代表的な製品について詳しく紹介しています。 この他の製品については「 ネットショップ 」をご覧ください。
110匹の動物
110匹の動物
1988年作
1988年6月、松屋銀座の遊びのギャラリーで200回記念展があり、5月の中頃から作図を始めて3週間ほどで仕上げたのがこの110匹です。展覧会の企画者が200回という数字にこだわって、1から200までの数を10数名の出品者に課題として与えました。私に与えられた数は「100→110」。この数字を生かして作品を作る。私の頭にひらめいたのは単純に110匹の動物でした。110匹を組み合わせではなくシングルで作ってみよう、シングルなら簡単だろうとそのときは軽く思いました。
ところがそんなに簡単なものではありませんでした。確かに50匹まではまあまあすらすらと手が動きました。そのあとが難産でした。搬入の前日になっても80匹ぐらいから先へ進まない。・・・展覧会の初日には恥ずかしながら83匹しか送ることができませんでした。会期中に完成させますとメモを送りました。そのうち松屋の係の人から「売れました」と電話が入りました。買った方は勿論110匹揃うことを疑っていないでしょう。ほっぽりなげるわけにはいかなくなりました。・・・
地球上には大小さまざま、陸、海、空に色とりどりの動物たちが生存しているのに、110匹を生むのに苦労しているとは情けない。造物主、神さまはさすがだ、エライ! 締め切り数日前になって苦しいときの神頼み。しかし、100匹ぐらいから先き一歩も進まない。苦しまぎれにエリマキトカゲなど思いつく。ヌーやバクなどあまりポピュラーでない動物も動員して、残る27匹を展覧会最終日の前日にまとめあげ、宅急便で会場に送りました。110匹の動物たちが展覧会場で勢揃いし飾られたのはフィナーレの数時間前でした。
もし私に与えられた数字が150、あるいは200だったらどうなっていたでしょう。・・・110という絶妙な数を私に与えてくれた展覧会の提案者と、赤札をつけてくれたファンに感謝しなければなりません。
小黒三郎著「日本昔ばなしと動物たち」より